有限会社ハッピーモア 多和田真彦さん

2012-12-29

今回は、有限会社ハッピーモアの多和田社長にお話しをお伺いします。

御社の概要をご紹介下さい。

平成20年1月に、ハッピーモア市場をスタートした会社です。農家さんに野菜を持って来てもらって委託販売を中心に開始しました。
元々私の父親がトマトを栽培していたのですが、規模が大きいことや、年齢的なこともあり、畑を縮小することになったんです。せっかくあるこの施設を、何か活かせないかと考えて思いついたのが、この直売です。
私は農業をやった経験も、野菜に関わった仕事も一切やったことがありませんので、ゼロからのスタートでした。

スタートは全てが勉強だったんですね。

そうですね。人をお手本にしたり、教えてもらったりすることからスタートしました。
そんなに難しく考えていなかったのですが、実際にやってみると野菜はかなり難しいです。

どのような点が難しいですか?

野菜はすぐ傷みます。朝採ったものが夕方にはしなっていたり、翌日にはダメになってしまいます。基本的に保存が利かないので、回転が難しいです。
農家さんも天候にかなり左右されるので、計画栽培がなかなか出来ません。同じ野菜が山ほどきて、売るのが難しい事もありますし、逆にない時は全くなかったりもします。偏りがあるのも、この商売をやってみて気付いたことですね。
その合間に、お客さんに野菜に関する教室もしています。今が旬の野菜を教えたり、旬じゃないものよりは旬の野菜を食べた方が良いですよと、アドバイスをしたりしています。

スーパーでは年中どの野菜もあるように感じていました。

全国から集めれば年中揃っているとは思うんですけど、我々が中心としているのは地元なので、市場に並ぶ野菜に偏りが出てきてしまいます。
主に宜野湾、中城、浦添、西原の農家さんが多いです。

宜野湾で野菜を作っているイメージがあまりありませんでした。

ないですよね。宜野湾市自体は野菜に関してあまり力を入れてないんですよ。宜野湾は市街化区域なので、農業するより家を建てなさい、みたいなところが強いんです。
私も、この商売やる時に農業委員会に相談しましたが、農業やるんだったら西原や中城が良いよ、宜野湾では補助も何もないよって言われました(笑)
他の市町村に比べたら農業をやる人は少ないと思いますが、農協もあるし組合の方もいます。
農家さんの中には、農協に属してない人も多く、家庭菜園や自分たちで食べるために野菜を作っている方たちが多いんですよ。そういった方々は組合員でもないから農協と取引もない、出荷するつもりもないけど自分たちが食べるよりも多く作りすぎた、なんていうケースが多いんです。こんなとき、必要な人たちの手に渡れば、という思いで利用される方が多いです。
たまに、家の庭にあるシークヮーサーを持ってくる人もいますよ。沢山実ると自分たちだけでは消費できないから、 そのシーズンだけ20キロぐらい持ってくるんです。
沖縄は食料自給率が低いと言われていますが、作った後にどうやって消費しようか悩んでる人が多いんです。野菜は沢山あるけど近所に配るのは、あげる側も貰う側も気を遣うんですよ。年配の方だと家族や子供から、「こんなにたくさん作らないで」って言われることもあるみたいです。
ある日、レジに並んだお客さんが、「作物を作ってもあげるところがない」という話しをしていたんです。だったらウチに出してって言ったら、その日の夕方に収穫して持って来てましたよ。

農家の人は作り甲斐があって元気になるし、買う側の人は新鮮な野菜が手に入るから嬉しくなりますね。

農家さんがお客さんとコミュニケーションを取ったりもしてます。これが1番売れやすいんです。作った本人が持ってきますから、こんなして育ててるよ、薬は一切使わんよ、こんな食べ方が良いよ、なんて話しを直接聞いてお客さんが喜んでいます。ハッピーモア市場には、こういうコミュニケーションがあります。

よくスーパーなんかで見かける、「○○さんが作りました!」よりも安心できますね。

写真じゃなくて本人が野菜持って来ますから、生のトレーサービリティですね。
農家さんの顔写真を置こうとしたのですが、恥ずかしがって撮らせてくれなかったんです。ブログには、持って来たときに「持って来ましたー!」って載せてますけどね。
でも、農家さんの名前は出るので、みなさんプライドを持って作っています。少しでも、ものが悪いと出さない人もいますし、農薬を使わない人も多いです。 これも小さい農家だから出来ることですね。規模が小さいからこそ、隅々まで管理が行き届いているんです。 これが何千坪のレベルになると、とてもじゃないけど見てられません。

手塩に掛けて作られた野菜ばかりなんですね。

そうです。農薬を使わない農家さんが多いので、たまに野菜から虫が出てきたりすることもあります。とっても虫が苦手な人は返品することもありますし、虫に食われた野菜を見てこれが良いんだよって言う人もいます。それでも農家さんたちは、売るからにはできるだけ綺麗な野菜を作りたいと、一生懸命に手間暇掛けてる方ばかりです。

実はうちにもパパイヤの木があって、実がなっても毎回捨ててるんですよ‥

ですよね。そういうのを出品したら良いんですよ。これって資源じゃないですか。捨てるよりは、欲しがってる人の手に渡る方が、お互い嬉しいじゃないですか。
お客さん自身が、家のプランターで育てた野菜でも、販売して良いんですよ。

昔の物々交換のような感じですね。

そんなイメージです。お互いコミュニケーションを取り合っていて、お客さん、農家さん 、スタッフとの距離は、非常に近いと思います。
一度購入して、その農家さんのファンになる人もいますよ。ブログで「○○さんの野菜入荷しました」と更新すると、すぐ買いに来るお客さんや、連絡がきて取り置きを頼まれることもあります。

どんどん広まっていくと良いですね。

これが地域のコミュニティーになれば良いなと思ってます。
手作り酵素教室や、勉強会、イベントなど、この場所を使って様々なことをやっています。一般のお客さんが主催して何かやる時には、一緒に協力もしますよ。地域を元気にしようと掲げています。
僕らが今、力を入れてるのが、沖縄の薬草なんです。野菜の邪魔をする雑草だと思っていたものを調べたら、薬草だったんです。昔の本も色々と見てみたら、薬草は宝と書かれていました。沖縄では宝物が実に多いのです。その宝がそのへんに転がってますよ。これを活かせないかなと。もっと薬草に力を入れて良いんじゃないかなと思います。まず形から「薬草ワールド」って名前付けました(笑)
手作り酵素の中には、そういった薬草なども100種類くらい入れてます。
お医者様では治しにくい病気も、薬草だったら治るんじゃないかなと感じています。国のためにも良いと思うんです。医療費も掛かりませんし、自然のものですし、もっと薬草を活かすことが出来れば、良いこと尽くしだと思います。

台風被害や対策に関して、県や市への要望はありますか?

金銭的な援助も必要だと思いますが、台風の被害に遭わない方法を、もっと工夫したら良いんじゃないかなと思います。
台風対策で、もっと頑丈なビニールハウスを作れば良いと言っても、お金が掛かります。ここでコストが何千万、何億も掛かっていたら、この借金を返すのに生活が苦しくなってしまいます。そういったことよりも、もっと他に方法があると思うんですよね。
小さなビニールハウスでも、周りにネットを覆ったりすると、防風林代わりになります。こういうことを、JAや国がもっと研究していってほしいです。台風が来たら壊滅することはわかっているんですから、来ても大丈夫なような方法を、研究してほしいです。
最近は、台風に負けないために野菜工場で作ったら良いんじゃないか、という話しも上がっています。台風に影響されてる農業じゃ、食べていけませんからね。時間もお金も掛けて野菜を育てて、出荷直前であっても台風が来れば全てダメになります。こんなのは、賭けにならないじゃないですか。そうじゃなくて、確実に計画を立てて収益になる農業をしていくことも、必要なのかなと思います。

食物工場には反対ではない?

逆に、必要かなと思ってます。台風の多い夏場は、野菜が全然なくなってしまいます。工場なら台風なんて関係ないですからね。しかし、沢山の照明を使って育てる方法だと、電気代でコストが掛かるんですよ。自然のもので作るより大変な面も多いです。もっと防風林などの台風対策を研究したら、自然の農業がやりやすくなるんですけどね。
外国では、国を挙げて農業を、応援しているところが多いんですよ。例えばキューバでは、農薬以外で野菜を守るには何が良いのか、国が研究をしているんです。 オランダでは、観光メインのように思われますが、実は農業が中心なんです。売り上げも観光より農業の方が高いんです。 日本も農業にもっと力を入れないと、海外と競争できなくなると思います。
海外は、農業を育成することに力を入れています。それに比べると、日本はもとより沖縄でも、農業で生活できてる若い人は少ないです。また、お年寄りが趣味的にやっていたり、生活の糧にはならないけど、自分たちが食べるだけといった規模が多いと思います。
今年の夏は、パインがなかり減っていたんですよ。農家さんに、台風の影響ですかと聞いたら、「違うよ」と答えが返ってきました。「70歳を過ぎてからパイン作るのが難儀だからやらない、本当の原因はそこだよ」と言っていました。体力が落ちて、70歳越えた途端に作る人がいなくなるんですよ。若い人が、一生懸命やれる農業を、やっていかないといけませんね。

若い人たちが農業をする環境を、国も県もみんなで作っていくべきですね。

海外では、JAみたいな大きい組織がバックアップして、いろんな研究や育成をしているんです。沖縄でも、もっと育成していくべきです。
サラリーマンの何倍も働いて、それなのに収入も少なくて、台風が来たら終わり。これでは、農業をやる人が少ないですよね。農家さんのほとんどが定年した60代です。 農業を本業にするとなると厳しいものがあるので、儲けは考えずに趣味でやっている感じです。ハッピーモア市場に来てる8割くらいの方が、儲けを気にしていません。そのため、安かったりします。それでも農家さんたちは、作ることに喜びを感じています。更に、食べたお客さんが喜んでるのを見て、また喜びを貰っています。
商売に関わっていることもそうですが、私の先祖に、農業を広めた儀間真常がいるので、農業への思いが強い部分があるのかもしれません(笑)
しっかり利益が出て、みんなが安心して儲かるようにするには、どうしたら良いのか考えています。そういった面では、食物工場でも良いと思います。ちゃんと計画して、収入もあって、生活もできて、利益も取れる農業。その実験として石垣島の企業グループで、「野菜工場」がスタートしたんですよ。その野菜工場がモデルとなって1年かけて実験をするんです。

沖縄は観光立県でもあり農業立県でもありますよね。

本当にそうです。この2つ平行で良いと思います。沖縄は年中野菜ができます。そういった、沖縄の自然を活かした農業ができれば良いなと思っています。
たまに、東京から注文が入ることもあります。「内地でもゴーヤーはいくらでも手に入るでしょう?」と聞くと、 「同じゴーヤーでも内地と沖縄では味が全然違うと」、お客さんが言っていました。同じ野菜でも、作る環境によって味に違いが出るんですね。そういった面でも、温暖気候の沖縄と農業の相性は、とても良いと思います。
茸も、ハッピーモア市場に出してもらっています。障害を持った人たちの自立支援を目的に、浦添のNPO法人で茸栽培をしています。このように様々な面で、農業は必要だなと感じます。
今の農業は、農薬撒けば良いと考えられることが多いですが、昔は違います。月を基準にしていたんですよ。新月だから今日は休みとか、満月だから収穫とか。月と農業は、深い関係性があるんです。それがいつの間にか農薬が使われはじめたりして、伝統がなくなっていきました。

昔の手法を見直すべきですね。

畑に、針金を立てているんですけど、あれだけで虫が来ないんですよ。嘘みたいですよね(笑)農業を教えて頂いてる大城先生が、昔の本を読んでプランターで実験を始めたんですよ。そしたらプランターに虫が付いてないんです。これ効くよーって教わりましたが、本当かな?と半信半疑でした。同じ時期に種を撒いて、針金をやった場所と、やらない場所で、比べてみました。結果、面白いほど全然違いました。慌てて針金いっぱい買って来ましたよ。番線っていって、建築屋さんが足場を組むのに使う針金です。あれこれ虫除け対策するより、これは簡単です。

農業って面白いですね。

面白くないと難儀じゃないですか。やってるうちに発見があったりして面白いですよ。楽しくやって、農業は面白いよっていうことを、どんどん伝えていきたいです。

最後に、我々と同年代、中年のおじさんたちへエールをお願いします。

自分たちが楽しんでやっていくことが、大切じゃないかなって思います。我々自身が日々、元気に楽しんで、若い人にも、年を重ねた人にも、良い影響を与えていけたら良いですね。
そして、横の連携を密にしていって、一人一人が夢を持つことです。できるできないは結果であって、死ぬまで夢を追い続けたら、元気でいられると思います。先がない、やり尽くしたって思った途端に弱っていきますから、死ぬまでやれることを、目指し続けていきたいなと思います。
そうやって同年代が、みんなで夢を語って、みんなでその人の夢を応援しようって、月1回集まってやってるんです。マスターマインドっていって、精神や考え方が前向きな人たちが集まって、みんなで祈るんです。エネルギーのある人たちが集まる環境に行くと、力になりますよ。

野菜の話をすると、ウーマクーの様にキラキラした目で楽しそうに語ってくれた多和田さん。
今回は農業の大切さと農業の地域に対する役割について、深く感銘を受けました。
これからも古くて新しい未来の農業のために、頑張って下さい!

多和田 真彦

有限会社ハッピーモア 代表取締役社長

沖縄県宜野湾市志真志1-247-1
http://happymore.jp/
098-896-0657

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